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2014年6月1日〜7日 ゴビ砂漠マラソン(GOBI MARCH)に出場してまいりました。 |
ゴビ砂漠マラソンとは、 砂漠を舞台として、自分自身のウェアや寝袋や食料などをすべて背負い、7日間250kmの合計タイムを競う世界大会であります。 開催は、中華人民共和国 ウイグル自治区内であり、世界40カ国以上より112名が参加。 (内9名が日本人であり、僕は日本人最年少でありました。) 高低差は山あり谷ありの10,513m、気温0〜30℃という環境下で、走力以外の精神力や生命力が問われるレースでもあります。 |
装備は自分自身にあったクツやウェア、食料(2,000kcaL以上/日)や塩分、コンパスや寝袋、その他装備を合わせ、総重量は12kg。 この重量のリュックを背負い続けるため、どのメーカ、どの製品を選ぶのか、すべての装備に対して検討を重ねます。 食料は砕いて小さくし、容器を移し替え、g単位で軽くするために何度も何度も調整しました。 もちろんこの大会に向けて、半年前よりスケジュールを組み、日々のトレーニングを積み重ね、コンディションを整えて臨みました。 |
そして、レース前日。 各国から参加者が集まり、競技説明が行われた。 元マラソン世界王者をはじめ、多くのトップアスリートがいる中で、同じステージで戦うことに自然と緊張と興奮が高まってくる。 |
興奮が冷めやまぬまま、いよいよレース当日。 これから7日間、どんなドラマが待ち受けているのかとドキドキしつつ、自分の身体はどうなってしまうのかとハラハラしながら、いざスタート。 序盤は身体のコンディションを確かめつつ、周りの様子も見ながら走る。 さすがにトップはペースが速いものの、中盤に位置することに。 熱中症や脱水症状にならないよう、こまめに水分補給をしながら、電解質タブレットも1時間おきに補給しつつ、軽快に走る。 だが30kmを過ぎたあたりから、肩が猛烈に痛みだしてきた。 12kgのリュックを背負い、アップダウンを繰り返しながら、はや5時間。 初日のゴールまでまだ20km弱。その後4時間もの間を耐え忍んで、8時間41分にてなんなく初日を終えた。 1日目より、全身の疲労感と肩の強い痛みを抱えることとなった。 |
2日目、肩の痛みは残っているも、距離は40kmと昨日より10km短い分、楽な気持ちで臨んだ。 まだまだ序盤、無理せずリズムよく、一歩一歩進んでいく。 途中から肩が痛くて痛くてしょうがなく、リュックの位置を調整したり、走り方を変えたり、肩をほぐしたり、試行錯誤を繰り返す。 そうこうしている内に、ドリンクホルダーがずれ落ち、リュックのベルトがゆるみ、トレッキングポールも伸びたり縮んだり、再び試行錯誤を繰り返す。 そんな格闘をひとりで数時間。。。 そして気がつけばあっという間にゴール。 トラブルもあって、ようやくレースにも装備にも慣れてきた。 |
3日目、予想外の事態が!! 就寝中の雨により、テントが浸水!! 気温は0℃程度。装備は濡れ、体は冷え、精神的に相当堪える。 だが、幸い朝には雨は止んでおり、なんとか状態を整えてスタートをした。 しかしまたも天候が悪化し、コースが沼地と化し、雹が降り、心身ともにストレスがかかる。 “砂漠で雹が降るなんて、、、”と思いつつも、これもレースのひとつだ。と言い聞かせて、走り続ける。 |
4日目、雲ひとつない晴天となった。 すがすがしい朝を迎え、遠くに見える山々は雪化粧され、まさに絶景。 今日を終えれば、半分を折り返しだ。 広大な大地と、青々とした空、素晴らしい景色の中で走れることに幸せを感じる。 この日もアップダウンを繰り返し、30kmを過ぎたころ。 ついに脚が痛く、走ることがままならなくなってしまう。 今までの疲労蓄積の上、ここでの衝撃に耐えきれず、左脚膝裏を痛めてしまった。 そのまま脚をひきづりながら歩く。 左脚をかばいながら進むと、右脚にも強い疲労がでてきた。 もう歩くことすら辛い。 周りに人は誰もいないし、砂漠に自分ひとり。 気持ちは落ち、不安だけが大きくなってくる。 “痛みがもっとひどくなるんじゃないか”、“歩くことすらできなくなるんじゃないか”、“リアイアになるんじゃないか”、、、 いっこうに不安は無くならなかったが、とにかく歩みだけは止めずに2時間。 ようやくゴール。 長かった、、、長かった。 |
5-6日目、この日が最も長いステージであり、その距離68km。 脚は回復していないも、悪化もしていなく一安心。 だが痛みはひどいままであり、走ることは難しそうだが、とにかく完走を目指す。 今日は長い一日のため、最初からとにかく歩く。 上りも下りも平地も、とにかく歩く。 スタートから8時間を過ぎたあたりで、中間地点に到着。 歩き続けることも、脚の痛さにも慣れてきて、この状況に徐々に順応していく。人間のすごさを実感した瞬間だった。 スタートから12時間。45kmを過ぎたが、慣れて麻痺していた脚も、ダメージが蓄積され悪化をしてきた。日もおち、真っ暗闇の中、ひとり進む。あと23km。 右も左も分からない場所で、身体はボロボロ、今にも倒れ込みそうな状態。だが、頼れるものは自分自身のみ。 とにかく、一歩進むこと。 そしてまた、一歩進むこと。 心細くなるし、不安にもなる。 辛い思いをしてなぜ進むのか?と、自分自身を追い詰める。 反面、追い込まれるだけ勇気や闘志を奮い立たせる。 まだいける。今が成長のチャンス。と、自分自身を鼓舞する。 そんな葛藤を何度も何度も何度も繰り返しつつ、一歩一歩進み続ける。 そうして歩み続けること6時間。ようやくゴールが見えた。 スタートから18時間を越えた、深夜2時。 体いっぱいが、安堵感につつまれた。 |
7日目、いよいよ最終日。 あれだけ長かった250kmもあと少し。 ゴールを前にすると、色んな思いがこみ上げてくる。 雨の降る日も、仕事から帰った夜も、ひとで練習をしてきた日々。 なぜそこまでして走るんだ?と、自問自答する日々。 知人や友人からの誘いも断り続け、たくさんのことを諦めてきた。 その都度その都度、弱い自分が甘えようとする。 そんな自分自身と向き合うのがすごく辛かった。 でもこうして乗り越えられたからこそ、人として大きく成長できた気がする。 そのひとつのカタチとしてのゴールだ。 この先もどんな道が待っているかは、わからない。 不安も弱い自分も、たくさんある。 けれど、自分にできることをひとつひとつ積み重ねていこうと思う。 そしたらきっと、素敵な仲間ができ、素晴らしい景色に出会い、今までにない世界が広がっているはずだから。 |
<今後の世界大会予定> 2014年10月 南米アタカマ砂漠マラソン 2016年3月 アフリカサハラ砂漠マラソン 2016年11月 南極マラソン ※ゴビ砂漠、アタカマ砂漠、サハラ砂漠、南極の4マラソンを総称して、世界4大砂漠マラソンと言われており、その4つ達成を目指しております。 <メッセージ> 近畿大学代表として、日本代表として、精一杯走ります。 そして人に、“挑戦する素晴らしさ”を伝えられるようになります。 みなさま、引き続き応援のほど、どうぞよろしくお願い致します。 H18年卒 北田雄夫 |
<自己紹介> 1984年、大阪生まれ。 近畿大学陸上競技部に入部後、選手として主将として日本選手権4×400mR 銅メダルへと貢献。 翌年の日本選手権で優勝を狙うも、オーダーミスにより日本一の夢は途絶える。 その悔しさをバネに、心機一転短距離から長距離に転向。3年をかけて国内頂点のトライアスロンレースIRONMAN(swim 3.8km, bike 180km, run42.2km)を完走。 その後世界に目を向け、アフリカ大陸最高峰キリマンジャロ5,895mに登頂し、2014年6月にはゴビ砂漠マラソン7日間250kmを完走。 2016年にかけて、世界4大砂漠マラソン(ゴビ砂漠、アタカマ砂漠、サハラ砂漠、南極)走破を目指していく。 |